エンタメパレス

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元香港の芸能記者に聞いた最新・香港エンタメ事情

 

 コロナ禍から香港のエンタメ事情はどのように変化したのか。『東方日報』 など5社でベテラン芸能担当記者として活躍したジェームス・ラムさんが来日。インタビューさせていただきました。

 

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元ベテラン芸能記者のラム・ジェームスさん

Q.トニー・レオンがハリウッドにも進出し、ベネチア映画祭で金獅子生涯功労を受賞しましたが、香港の人にとってトニーはどんな存在ですか。
A.香港人にとってトニーは「神」レベル。もうトップ・オブ・トップで彼に代わる存在はいない。彼が出演したハリウッド映画、マーベルの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』もトニーを観るために映画館に足を運んだ。トニーの受賞はみんな自分のことのように喜びましたが、ミッシェル・ヨーがアカデミー賞主演女優賞を受賞したとき、「香港の誇り」とメディアが報じたのはブーイングでした。彼女は中華系のマレーシア人ですから。

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トニー・レオン(東京国際映画祭2023マスタークラスにて)

 

Q.惜しくも他界したレスリー・チャンはどのような存在ですか?
トニーと同じトップ・オブ・トップです。毎年、命日に追悼イベントが開かれる。彼が他界したあとに生まれた世代も、レスリーの歌を聞いている伝説のスーパースターですね。

Q.香港四大天王の現在は?
A.ジャッキー・チュンとレオン・ライは歌をメインに活動。ジャッキーとレオンは人気はありますがは歌手として圧倒的な人気がありたすが、半分引退したような感じ。すでにリッチだし、たまにコンサートをするなどマイペースに仕事をしています。アンディとアーロンは映画を中心に活動。音楽業界は配信が主流でCDが売れないこともあって。

Q. 亜州影帝のチョウ・ユンファの現在は?
A.香港人にとってはずっと「神」の中の「神」のような存在。にもかかわらず庶民的で、普通にバスや電車に乗るし市場で買物している。最近は、趣味のマラソンのため山でよくランニングをしているそうです。彼に会えたら、もう写真取り放題。自分から周りにいる人と一緒に写真を撮ろうと言ってくれることも。香港のスターはファンサービスも仕事のうちと考えている人がほとんどで写真やサインのお願いにはたいてい応えてくれますが、なかでもユンファは神対応なんです。

Q.金城武はどういう存在ですか?
金城武は2017年以来、映画やドラマにも出てないし、2018年の《風林火山》(まだ公開してない)の撮影が終わった後、あんまり表に出ないので、名前は知られていますが香港では人気があるとは言えないですね。

Q.今、香港でいちばん人気といえば?
A.間違いなく「MIRROR(ミラー)」です。2018年ViuTV局のオーディション番組で12名が選ばれボーイズグループを結成。現在、メンバーはソロでも活躍しています。いまや社会現象になるほどでCMの出演数も凄い。全盛期の日本のSMAPのような存在です。なかでもいちばん人気はグループの顔でセンターのギョン・トウ、香港版『おっさんずラブ』の『大叔的愛』主演のアンソン・ローです。

 

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香港誌『東週刊』vol.1054より

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MIRROR出演のCM

 

 MIRRORには元制作担当だった優秀な女性マネージャーがついていて、それぞれのメンバーにぴったりの映画や歌の仕事を選んでいる。売れていないメンバーは人気メンバーと一緒に出すなどうまく先導しています。彼女は昔、TVB局のスタッフでしたが大事な仕事は任されていなかった。MIRRORが誕生したオーディション番組で選ばれなかった4人もグループ「ERROR (エラー)」を結成してバラエティなどで活躍しています。映画『毒舌弁護人』の御曹司役ホー・カイもこちらのメンバーです。

 

Q.映画『毒舌弁護人』が歴代興行収入を塗り替える大ヒットとなりましたが、主演ダヨ・ウォン(ウォン・ジーワー)の評価は?

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A.香港では、スタンダップコメディアンの第一人者ですが、バラエティー番組の司会者、映画俳優、映画監督、脚本家としても活躍しています。2000年に香港で視聴率トップを記録したコメディドラマ『男親女愛』(TVBテレビ)に主演し、俳優としても躍進しました。今回の『毒舌弁護人』でさらに俳優としての実力を見せつけて高い評価を得ています。
 仕事でテレビ局に出入りしていた頃、しょっ中会っていましたが素顔は気さくで優しい人格者。とても頭の回転が早く、相手を飽きさせないから友達が大勢いるし女性にもモテる。奇跡の60代といわれていますが、40代の頃から楽屋でシートパックをしていた。男でもしっかり肌のケアをしていた成果ですね。(笑)

 

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ダヨ・ウォン(香港映画祭2023Making Wavesにて)

 

Q.最近、人気の映画、ドラマは?
A.映画は1番はやはり『毒舌弁護人』、2番めは三兄弟と三人の女性が織りなすおラブコメディ『6人の食卓』でどちらもダヨ・ウォンが主演です。3番めはルイス・クー主演の『未来戦記』これは香港初のSF大作てとても見応えがある。ルイスがプロデューサーでもあります。Netflixでも配信されました。彼は香港映画のために尽力していると評価が上がっています。
 ドラマでは『おっさんずラブ』のリメイク『大叔的愛』 新しいTV局のViuTVが制作して最高視聴率を出しました。香港で初めてゲイを取り上げた作品でしたが国民的スターグループMIRRORのアンソン・ローとイーダン・ルイがW主演だから幅広い年齢層の人が観て、LGBTへの理解が深まったと思います。かつて君臨してきた地上波TVB局のドラマはダメ。勧善懲悪やハッピーエンドの単純な作品が多く面白くない。最近『新聞女王』は話題になりましたが制作は外注のプロダクションです。
『大叔的愛』を手掛けた地上波ViuTV局は2016年にできた新しい局ですが、MIRRORを産んだオーディション番組など話題作を続々、制作しています。
 またNetflix など配信の作品を観ている人も多く、韓国ドラマはいちばん勢いがある。『イカゲーム』『マスクガール』などが人気。その次が大陸のドラマで、アメリカ、日本、台湾の順です。このところタイBLも人気が出てきました。ただし主演がイケメンに限るようですがー(笑)

Q.若手の俳優で最近、活躍しているのは?
A.男優はMIRRORのリーダーで舞台でも活躍するロッマン・ヨン、アンソン・ロー、イーダン・ルイ、アンソン・コンですね。女優はジェニファー・ユー。いっときのセシリア・チャンのような爆発的人気ではないですが、今年の東京国際映画祭で上映された『白日の下』のヒロインや『七人楽隊』など映画の出番が多い。

Q.日本の作品や俳優で人気があるのは?
A.ドラマ『ファーストラブ』が人気が高く北海道まで聖地巡に行く人もいました。その影響で主演の佐藤健は人気があり、香港にも来たときは大話題でした。また米国ドラマ版『ワンピース』に出演している新田真剣佑も作品と共に人気を集めています。

Q.音楽に関してどうでしょう?
A.男性歌手だと、広州出身で香港でデビューしたヒンス・チャンが歌唱力には定評がある。作曲家からシンガーソングライターとして活躍するテレンス・ラムも人気です。
 やはり日本と同じく、K-POPは人気でBLACKPINKのコンサートのチケットが5分で完売になりました。香港でもガールズグループが増えてきましたが、まだまだ成功するかどうかは未知数。日本のミュージシャンではYOASOBIがいちばん人気。次が米津玄師、乃木坂46でしょうか。欧米で注目されているシティポップスのリバイバル人気は香港ではあまり話題になっていません。山下達郎のクリスマスイブはよく知られていますが…。

Q.コミックに関しては?
A.香港のコミックやアニメは低迷です。そのぶん日本の作品、アメリカのマーベルやDCコミックに人気がありますね。日本のアニメでは『SPY FAMILY 』『チェーンソーマン』『呪術廻戦』などが人気です。コンビニにポップアップコーナーができたりファーストフード店とコラボするほど。今月15日から新年1月31日まで香港で「呪術廻戦展』も開催されます。

 

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 日本のアニメが好きなジェームスさんとカーイーさんは、来日中、いちばん楽しかったのは『GUNDAM FACTORY YOKOHAMA』に行ったことだそうです。今回、ジェームスさんはクレープ、カーイーさんはわらび餅の美味しさに目覚めたとか。日本で買ったものでは、ジェームスさんは『チェンソーマン』のTシャツ、カーイーさんはスニーカーがお気に入り。

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ジェームスさんと妻カーイーさん

ジェームス・ラム

8月22日香港生まれ。元芸能担当記者。『YES!』『東TOUCH』『東方日報』『明報』『太陽報』の5社の記者として香港をメインに、日本、韓国、台湾やハリウッドの俳優や歌手を取材。日本に留学経験があり日本語も堪能。日本の文化、特にアニメが大好きで来日回数は50回以上。


カク・カーイー。

3月26日香港生まれ。ジェームス氏の妻でエンタメ全版に詳しい。日本が好きで短期留学。「マイ・メロディー」のキャラクターが大好き。

取材協力

香港愛好園

https://hongkongland-jp.com/


※敬称は略して掲載させていただきました。
ジェームスさん、カーイーさんには時に相談しながら質問にお答えいただきましたが、お二人の了解を得て読みやすいように答えはひとつにまとめました。