海外ドラマ評論家という仕事柄、あらゆるジャンルの作品を観ますが、個人的に大好物なのはラブコメです。社会派やサスペンスなどに比べて下に見られがちですが、女性に人気が高く需要があるのはやっぱりラブコメ。
ラブコメ大好物の私が過去5年観たなかで、いちばんお薦めしたいのが韓国ドラマ『彼女の私生活』 ラブコメの女王パク・ミニョンと正統派美男キム・ジェウクで30代の大人の恋愛を描き、かつK-POPの「推し活」がわかる作品です。
パク・ミニョンが演じるソン・ドクミは表向きは完璧に仕事をこなす美術館の首席キューレター(学芸員)ですが、裏の顔は筋金入りのアイドルの追っかけ。自らファンサイトを作成し、空港で出待ちして撮った写真を公開、「推し」のPV撮影場所を聖地巡礼、部屋のなかはまるで「推し」グッズのギャラリーと推し活が生き甲斐なのです。
そんな彼女が仕事で「推し」に会い、あろうことか「交際相手」だと誤解されてしまう。その疑惑を解くために、最悪の出会いをした美術館の館長ライアン・ゴールドと恋人のふりをすることに。
悪縁からの契約恋愛は、もう“韓ドラあるある”すぎる設定ですが、そこに韓国の推し活事情がたっぷり落とし込まれているところが面白い。
実際、ドクミのように、仕事では一切オタクを見せず、プライベートではどっぷり推し活の人も多いはずだからきっと共感度が高いのではないでしょうか。
ライアンを演じたキム・ジェウクはようやくそのイケメンぶりとセクシーさを発揮できる作品に巡り合えました。これまで恋愛ドラマではなぜか2番手役で、『ボイス』の背筋が凍る殺人鬼役などに果敢にチャレンジしてきましたが、やっぱり王道のロマンスで主演を張るべき逸材でした。
大人の恋愛ドラマゆえ、セクシーなシーンもそれなりにありますが、ジェウクの目線や手の動き、ひとつひとつの仕草が色っぽく今まで封印していたものをここへきて大放出です。
ミニョンのラブコメ代表作では『キム秘書はいったいなぜ?」(18)があがりますが、パク・ソジュンより相手役とのビジュアルを含めた相性は本作のほうが良き!と個人的には思います。
このところ仕事で観るべきドラマを視聴後、『彼女の私生活』でしめるのがルーティンです。美男美女のラブコメでクスッと笑って口角を上げるとストレスも軽減されます。
村上淳子(むらかみあつこ 海外ドラマ評論家/映画ジャーナリスト)