エンタメパレス

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TIFFCOM2023で開催「タイBLセミナー」レポート

 今年、4年ぶりにリアルで開催されたTIFFCOMでの「タイBLセミナー」を取材してきました。TIFFCOMは「東京国際映画祭(TIFF)」と併催される、アジアを代表するコンテンツマーケットです。映画、テレビ、アニメなどを中心とした多彩なコンテンツホルダーが一堂に会し、アジア諸国だけでなく、世界各国から有力なバイヤーが集まります。今年は久々に対面での商談の機会でもあり、52カ国からの参加があったほど大盛況でした。
(2023年10月25日〜10月27日まで東京都立産業貿易センター浜松町館にて開催。)

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 TIFFCOMは、近年では完成したコンテンツの売買だけでなく、IP(知的財産)、書籍の映像化権を扱う出展者が増加傾向にあり、映画やアニメ、ゲームなどマルチメディア展開に関する商談の増加により、映像化の機会を広げる場として成果を挙げているのです。

 そんな反響のなか、タイ国大使館商務参事官事務所主催の「境界線を越えて ~タイBLコンテンツの普遍的な魅力と多様性~」が10月25日に開催されました。

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 日本ではBLドラマ『2gether 』をきっかけにタイドラマが大ブレイク!まさか韓流の次に「泰流」が来るとは、私をはじめ海外ドラマ業界にとって想定外のことでした。

 当日はタイを代表するエンタメ会社10社が集結。なんと日本は40億円の価値があるマーケットとして認識されているそうで各社、プロモーションにも力が入るというものです。

 タイのBL小説を原作に、タイ初のBLドラマ『ラブ・シックス』を制作して話題を巻き起こしたスター・ハンター・エンタテイメント社の社長ヨット・ゴーンヒランさんは、その実績から「BLに関するノウハウには自信があります」とアピール。

『2gether 』の産みの親GMMTV社のスピーカーとして登壇したのノパラット・チャイヤウィモンさん(シニア・コンテンツ・プロダクション・ダイレクター)は「GMMTV社は30年以上の歴史があるクリエイター・カンパニーです。制作した約150タイトルの作品のうち30作以上はBLです」とBLに関してはまさに老舗の風格。

 

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 あの『おっさんずラブ』のリメイクを香港に続き制作することも決まっており、さらにアジア各国で勢力を拡大しそうです。

 昨年、タイ初のマフィアの世界を舞台にしたBLドラマ『KinnPorsche(キンポルシェ)』でBL界に新風を巻き起こしたビー・オン・クラウド社。そのCFOであるウィサルット・ロジャナパーニットさんは、『キンポルシェ』でのツアーの成功や少年だけのリアリティショーなど幅広いジャンルに挑戦していることをプレゼンテーションしました。

 

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 ガンタナー・モーション・ピクチャーズ社のディサラダー・ディサヤノン・ガンジャルックさん(コンテンツ開発ダイレクター)は、BLだけでなくアメリカの人気ドラマ『ゴシップガール』などリメイク作にも力を入れていることを語りました。

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彼女に続いて同社制作のBL作品『One Year 』に主演するイェン(Yen)が登壇。「ぜひ作品を観てください」と爽やかな笑顔でコメント。

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  ワサン・ホームセーンプラディット(ハリウッド(タイランド)社はCEO自ら登壇し、
「帰りのチケットを取っていません。契約が取れるまで帰らない覚悟です。僕は口説きやすいタイプなので、ぜひ口説いてください」とジョーク混じりにアピールして会場から笑いが漏れました。

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 全社のスピーチを見て感じたのは、タイのエンタメ企業の多彩な「攻め」の活動。芸能事務所のように所属の俳優や歌手を抱え、オリジナルの映画やドラマ、音楽の制作まで幅広く手掛けている会社もあり、BLだけでなく、GLや今後はTL(ティーンズラブ)作品の制作にも意欲的でした。

 

 日本のBLファンについては、アリッサラー・コンマン(MCOT社 コンテンツビジネス・リーダー)さんは、「非常にロイヤリティが高い。日本のファンは一度好きになったら、作品や俳優を推し続けてくれる。日本は大きなマーケットです。日本とタイの文化は違いますが、日本のファンのために特別に何ができるかを考えていきたいです」と語りました。 

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 タイBLのグローバルな魅力を有力エンタメ企業の ゲストスピーカーのスピーチで掘り下げたこのセミナーは非常に貴重で学びの多いものでした。

 

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【登壇者】 チャンタパット・パンジャマーノン(タイ国大使館商務参事官事務所 商務公使) 、ワサン・ホームセーンプラディット(ハリウッド(タイランド)社 CEO) 、ディサラダー・ディサヤノン・ガンジャルック(ガンタナー・モーション・ピクチャーズ社 コンテンツ開発ダイレクター) 、ウォーラリット・ニングロム(ガーオナー・プロダクション社 CEO兼ダイレクター) 、ヨット・ゴーンヒラン(スター・ハンター・エンターテイメント社 社長) 、アリッサラー・コンマン(MCOT社 コンテンツビジネス・リーダー) 、アカラワット・ピチャヤタナウィサーン(ティア51社 CEO) 、ノパラット・チャイヤウィモン(GMMTV社 シニア・コンテンツ・プロダクション・ダイレクター) 、テーワーラット・スパンニアム(ハロー・プロダクション社) 、アヌソーン・リムプラスート(ディー・ハップ・ハウス社 マネージング・ダイレクター) ・ウィサルット・ロジャナパーニット(ビー・オン・クラウド社 CFO)


TIFFCOM2023

https://tiffcom.jp/


村上淳子(むらかみあつこ)
海外ドラマ評論家/映画ジャーナリスト 

著書『海外ドラマ裏ネタ缶』(小学館)『韓流マニア缶』(マガジンハウス)『韓流あるある』(幻冬舎エデュケーション)ほか。共著『香港電影城』シリーズ(小学館)ほか。
(社)日本ペンクラブ 国際委員会委員

ブログ「海外ドラマ評論家・村上淳子のLOVEドラマ&LOVEハワイ」
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