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映画『九龍城寨之圍城』観賞記 香港映画史上最高のアクションがここに!

 香港で映画『九龍城寨之圍城』を金鐘 Pacific Place(太古廣場) MOViE MOViEにて見てきました。

 いやーもうすごい! 大傑作! 素晴らしかったです。私的には谷垣健治アクション監督のアクションはもう全ての香港アクションを超えたと言っても過言ではないくらい、次々と繰り出される超級レベルのアクションにノックアウトされました。

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 あの線が垂れ下がり棒が突き出た九龍城寨の暗く入り組んだ廊下?通路?隙間?を舞台に繰り広げられるアクションの数々。平面で戦うだけじゃなくて、上下に、垂直方向にも繰り広げられ、拳や蹴りに加えてナイフ、ナタ、刀、棒、机、ロープ、銃、バイク、もう何でもあり。そして刀槍不入(あり得ない~)の気功の鉄人まで。

 アクションに加え物語が本当にドラマティックで泣けました。ネタバレになるので詳しく書けませんが、1980年代の香港、無法地帯の魔窟でありながら人々の生活の場でもあった九龍城(九龍城寨、九龍城砦などとも呼ばれる)を舞台に、黒社会の派閥の争いと、過去の事件に起因する復讐劇が展開されます。
 まず最初、大陸から密入境してきた林峯(役名:陳洛軍)。当時は多かったんですよね。ごく普通に陸路や海を泳いで香港に入ってくる人たちが。家も家族も行き場もなかった彼が、この九龍城寨でようやく居場所を見つける。彼を見守る古天楽(役名:龍捲風。九龍城寨の世話役/吉川晃司みがあります)がまたいい~!
 最初、林峯は香港IDカードが欲しくて、頑張るけど、サモハン(「大老闆」と呼ばれる黒社会の某一派のボス)に騙されて入手できないんですよ(サモハン、ワルっ!)。悔しくてそこらにあった布袋をつかんで逃走するんですが(お金が入ってると思ったのでしょう)、中身は違うもので、そこから事件に発展…。というふうに物語が進んでいきます。
 

   九龍城寨の中に住む人々も印象深く、「魚蛋妹」(かわいそうな身の上)と調味料おじさん(早口すごいです!)は忘れられません。そして林峯が初めて得る仲間(涙)、その絆と男気、笑顔、ああなんか思い出したら泣けてきた(笑)。
 アクションやドラマと並んで印象深いのが広東語の台詞! テンポのいい広東語の応酬が粋で格好よくてしびれました(粗口だらけですが)。そう思ってたら、香港人も同じだったらしく、名台詞を集めた記事が出ていました。(一応記事を貼りますが、読むとネタバレになるかもです)

九龍城寨丨林峯笑爆伍允龍「高手喎~」網民為王九平反 | 最新娛聞 | 東方新地

 1つだけ紹介すると、たとえば古天楽演じる龍捲風がサモハンの寝室に侵入して言う台詞。
「唔好鬧啲𡃁呀,係我身手快喳」:「手下を怒るんじゃないぞ。(奴らが弱いんじゃなくて)俺の方がちょっと速くて強かっただけだ」
 これですよ。これを言った時の古天楽のカッコよさといったらもう「一生ついていきます、大哥!」でした。もっと書きたいけど、ネタバレになるのでまたの機会に。

 さあラストに向けて明らかになる事実の数々、伏線、「あの人」と「あの人」の絆。そして大闘争。――すべてが過ぎ去り、平和な雰囲気の中、屋根の上から見るのは…、アカンまた泣けてきた。
 キャストはみんなそれぞれとてもいいです!一番びっくりしたのはリッチー・レンのおじじぶり(老けメイクにプロ根性を見た。髪をバリカンで剃ってる動画があったので、劇中の髪はヅラなのか…。その上あんな所に入ったり…敬服します)。

 これ1本だけなんて勿体ない。古惑仔みたいにシリーズ化してください。と思ってたら、本当に三部作になるそうで! ますます楽しみです。

 

 

持有淑子(もちありとしこ)フリーライター/翻訳
香港が好きで、返還前・返還後の両方で在住経験あり。香港をはじめ中華圏の映画・ドラマ、欧米の映画・ドラマ、観劇も好き。共著「香港電影城」シリーズ。今は「慶余年2」を心待ちにしています。