嫌いだけど気になる、好きなのにお互いに素直になれないというラブコメの王道に韓国ドラマのお約束、契約恋愛を加えたハリウッド発の恋愛ムービーが『恋するプリテンダー』です。
なんと全世界興業収入300億円超え、アジア系の恋愛を描いた「クレイジー・リッチ!」(18)以来、ラブコメ史上の大ヒットを記録しました。
その理由を4つの見どころに焦点を当てて書いてみました。
①恋愛のあるあるが共感を呼ぶ
弁護士を目指すロースクールの学生ビーは、街角のカフェで金融マンのベンにある緊急事態を助けられたことをきっかけに最高の一夜を共にするのですが、翌日、お互いの言動の行き違いによって最高の出会いが最悪の出会いになってしまいます。
しかし、その後、オーストラリアで同じ結婚式に出席するため再会。はじめは険悪なふたりでしたが、挙式をするカップルのため、また互いの望みを叶えるために恋人同士のふりをする作戦を実行。ところが次第にフェイクが本気になりー。
恋愛において、互いに本音をストレートに伝えられず、誤解や不信感を生むことはよくあること。そんな状況や葛藤がリアルな「あるある」展開で作品に没入せずにはいられない。
②LGBTフレンドリーな視点
オーストラリアでは2017年に同性結婚が合法に。しかも結婚するのに国民や永住者である必要がないという開かれた政策で、地元だけでなく、国外から訪れた多くのLGBTのカップルが結婚しています。
ビーの姉がレズビアンで同性婚を挙げるという設定でごく当たり前にビーも両親も祝福し、シドニーのリゾート婚に出席するというハートウォーミングな展開が良きなのです。
③コアラも特別出演⁈オーストラリア観光気分を味わえる
本作はありがちなラブコメではなく、シドニーを舞台にしたことで一気にスケールアップ。美しいビーチから世界遺産のオペラハウスまで雄大な自然と都会が共存する素晴らしい場所で繰り広げられる眼福なシーンがたっぷり。
シドニー湾クルーズでのビーとベンの名作『タイタニック』ごっこからのパニックシーンが最高に可笑しい。
やっぱりオーストラリアといえばコアラ!の登場シーンもニマニマさせてくれます。
④大人向けエロコミカルな場面にクスクス笑いが止まらない
ふたりの出会いのきっかけからしてシモ関係で、その後、再会した飛行機内でもビーのいたずら心がエッチな行動に見えてしまう事態に爆笑です。
セクシーな場面ではないのに、やたら鍛えあげらた裸体をさらけ出すハメになるベンがイタくてチャーミング。
主人公・ビーを演じるシドニー・スウィーニーはZ世代の姿を過激かつスタイリッシュに描いた衝撃のドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』(2019〜)で恋愛に依存しがちな情緒不安定なキャシー役を演じ大注目さている実力派で、本作ではプロデューサーも兼ね、その手腕も高く評価されました。
相手役・ベンに扮するのグレン・パウエルは、『トップガン・マーヴェリック』(22)ではトム・クルーズ演じるマーヴェリックが教官を務めるエリート・パイロットチームのメンバー、ハングマン役を好演。熱血飛行士から一転、本作『恋するプリテンダー』では「こんなに裸になるとは思っていなかった」とコメントするほど、身体を張った演技を披露しているのです。
とにかくラブコメ大好物なら、これを観ずにはいられない。ハッピーな気分を味わいたい、オーストラリア旅行に行きたい、同性婚したいアナタにも推せる作品です。
【ストーリー】
弁護士を目指すロースクールの学生ビーは、街角のカフェで出会った金融マンのベンと最高の初デートを経験するが、ちょっとした行き違いによって恋心が一気に凍りついてしまう。数年後、そんな2人はオーストラリアで同じ結婚式に出席することになり再会。真夏のリゾートウェディングに皆が心躍らせる中、周囲も気を遣うほどの険悪ムードを漂わせる。しかし、復縁を迫る元カレから逃げたいビーと、元カノの気を引いてヨリを戻したいベンは、互いの望みを叶えるために恋人のフリをするというフェイク・カップル契約を結ぶ。果たしてウソつきな2人は、最高のカップルを演じきることができるのか…?
【作品詳細】
映画『恋するプリテンダー』
公開日:2024年5月10日(金)全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
監督:ウィル・グラック
脚本:ウィル・グラック、イラナ・ウォルパート
出演:シドニー・スウィーニー、グレン・パウエル、ダーモット・マローニー、ブライアン・ブラウン、アレクサンドラ・シップ、ガタ、レイチェル・グリフィス
制作年:2023年
制作国:アメリカ・オーストラリア
原題:ANYONE BUT YOU
上映時間:103分
村上淳子(むらかみあつこ)
映画ジャーナリスト/海外ドラマ評論家
雑誌『anan』のライターとして活動後、海外ドラマ、映画を得意分野に雑誌やWEBサイトに寄稿。著書に『海外ドラマ裏ネタ缶』(小学館)『韓流マニア缶』(マガジンハウス)『韓流あるある』(幻冬舎エデュケーション)ほか。共著に「香港電影城」(小学館)シリーズほか。