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強敵ヴィランにマブリーの鉄拳が炸裂!『犯罪都市 NO WAY OUT』を見れば気分爽快!

 マ・ドンソク、愛称マブリー(マ・ドンソク+ラブリー)の待望の新作『犯罪都市 NO WAY OUT』が公開された。前作『犯罪都市 THE ROUNDUP』(以後『2』と表記)から2年も経っていない。もう嬉しすぎる!

 本作はソウル公開後1カ月で興行収入100億円突破、動員数も1千万人超え。その後の資料を見ると、韓国映画シリーズ初の累計動員3000万人突破ということで圧倒的な人気だ。前作『2』も『パラサイト』以来3年ぶりとなる観客1000万人を突破。これは韓国映画歴代20作目の快挙だったという。最近、韓国映画が韓国で当たらなくなったという噂を聞くが、マブリーの痛快アクション映画は別格だ。

 今回も強力なヴィラン2人を相手にマブリーの鉄拳が炸裂する! 鉄拳の風切る音と相手の骨を粉砕する地響きのようなパンチ音が見ているものを興奮させる。これはもう映画館で体感するしかない!

 

マブリーの強烈ワンパ~ンチ!!

『犯罪都市 NO WAY OUT』 2月23日(金)より、新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国公開中

(C)ABO Entertainment presents a BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A. ENTERTAINMENT production world sales by K-MOVIE ENTERTAINMENT

 

 今回の舞台は2015年、前作から7年後の設定だ。マブリー扮するマ・ソクト刑事のケータイもガラケーからスマホに変わっている。

 また、ソクト刑事はソウル広域捜査隊に異動ということで、前2作でせこい上司(班長)を演じたチェ・グィファが不在なのが寂しいが、今回は同僚刑事キム・マンジェ役のキム・ミンジェがその分、コメディリリーフとして活躍してくれる。

 物語は…ある女性のマンション転落死事件を捜査していたソクト刑事たちが、捜査を進めるうち事件の背後に新種の合成麻薬と日本のヤクザ組織の存在が浮かんでくる。

 

マブリーの右が今回の相棒役キム・ミンジェ。

 冒頭に、極めて残虐なシーンが入るがここは、『1』の朝鮮族ヤクザたちの所業を彷彿とさせる本シリーズの特徴的な描き方で、敵が悪逆非道を重ねれば重ねるほど、いつか来るであろうマブリーとの対決が待ち遠しくなる。

 この冒頭シーンで観客の度肝を抜くのがチュ・ソンチョル役を演じるイ・ジュニョクの狂暴ぶりだ。この時点でこいつの正体は不明だが、情け容赦ない強面の悪役ぶりがド迫力だ。返り血を浴びながら潜入捜査官を躊躇なくスパナで殴り続ける…。

凶暴なヴィランを演じるイ・ジュニョク。

 元々『1』の大ヒットの主因はもちろん、主役マブリーの演技と存在感にあるわけだが、ここまですごい悪人がいるのかと驚嘆させたユン・ゲサン扮する朝鮮族ヤクザの存在感にもあった。

 K-POPの超人気スターグループgodのラッパーであったユン・ゲサンは、その後映画・ドラマに転向し主役やヒーローを演じてきたが、この作品でヴィランを演じて、初めてマブリーと対等に渡り合った。その強烈な存在感が『1』の成功を支えたと言っても過言ではないだろう。朝鮮族ヤクザのユン・ゲサンの部下を演じたスキンヘッドのチン・ソンギュの迫力も凄くて韓国青龍賞助演男優賞も受賞した。話はややそれるが、この朝鮮族ヤクザはよく韓国ノワールに登場する。名優キム・ユンソクが朝鮮族ヤクザを演じた『悲しき獣』もちょっとここには書けない非道さがあった。

 ユン・ゲサンは長髪にし体重を増やし、身体を鍛えまくっての出演だった。今回のイ・ジュニョクも普段はすらりとしたイケメンだが、今作の撮影時にはなんと20キロ増量し、身体を作ったという。そうでなければマブリーとは対決できないだろう。

 さて今回、日本の観客に嬉しいのは青木崇高が本シリーズ初のグローバルヴィランを演じている点だ。

 青木崇高といえば、『るろうに剣心』の喧嘩屋こと相楽左之助役が印象深い。今回は、ヤクザの大親分國村隼に派遣された「掃除屋」として韓国に上陸、格闘派、武闘派の部下たちをずらり引き連れ、日本刀を武器に斬りまくる。

 アクション映画としての本シリーズの魅力の神髄は、ガンアクションはほんとんどなく、「殴る蹴る刺す斬る」の4大肉体アクションにあることだ。

 青木崇高には最初、もっと刀身の短い刀を持たせたが、彼の上背とのバランスを取って長い刀身の日本刀に変えたとのこと。背の高い韓国俳優陣にあって身長でも見劣りしない青木崇高の堂々たる悪役ぶりとアクションは見ものだ。

日本からやってきたヤクザ組織が韓国に上陸!中央には「掃除人」役青木崇高。

日本からやってきたワールドヴィラン青木崇高の雄姿と面魂!

 

 マ・ソクト刑事は異動になったとはいえ、本作でも例の「真実の部屋」(監視カメラを隠して犯罪者に泥を吐かせる)は健在だし、随所に笑わせてくれる。本シリーズはアクションとユーモアのブレンドも魅力だ。マブリーは、『ダイハード』のブルース・ウィリスを意識したと語っているが、本シリーズはアクションシーンや残虐シーンの合間に入るユーモラスなシーンが絶妙で、見ていてほっとする瞬間があり、いつも楽しみだ。詳しくは書けないが、ラブホでの捜査シーンがめちゃおかしかった。

 

なぜかラブホでの尋問シーンです。劇場で笑ってください。

 監督イ・サンヨンは、『1』で助監督を務めた苦労人とのことで『2』が初監督作。マブリーやアクション監督との相性もいいいのだろう、今回ものびのびと演出している。

 マブリー初登場場面の「掴み」のアクションもこのシリーズの見どころの一つで、『ダーティハリー』シリーズの冒頭に必ずある銃撃シーンみたいなものだ。本作でも冒頭のこの掴みのシーンでやはりぐっと物語の世界に引き込まれた。「よ! マブリー!!」と思わず掛け声を発したくなる。

 最後にマブリーのアクションについて。今回はマブリーお得意のボクシングファイトが目立っていて、マブリーの正面撮りのファイティングポーズとの切り返しショットも迫力満点で、特に『2』以降はアクションの音響が素晴らしく、マブリーのパンチの風を切る音や敵をパンチで粉砕したときのズシンと響く音の爽快感はもう最高である。

 毎日嫌なニュースばかりの昨今、こういう映画を見てスカっとしていい気分になろう。ほんと気分がアガりますよ。

 ※資料によるとこのシリーズは『4』も『5』も予定されているらしい。『4』に関しては本作のエンドロールの後にちょっとだけ予告されているので絶対席を立たずに最後まで見るように。早く続きが見たい!

 

スカっとしたいなら見るしかない!

柚木 浩(コミック編集者/映画ライター)
『香港電影城』シリーズの元編集者&ライター。
香港映画愛好歴は、『Mr.Boo!』シリーズを日本公開時に劇場で見て以来。
火が点いたのは『男たちの挽歌』『誰かがあなたを愛してる』『大丈夫日記』『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』あたりから。

韓国映画愛好歴は90年代後半あたりから。初めて韓国の映画館で見た作品はソン・ガンホ主演の『反則王』。好きな韓国映画は『オーバー・ザ・レインボー』『殺人の追憶』『八月のクリスマス』『永遠の片思い』『グエムル 漢江の怪物』『犯罪都市』など。好きな女優はチャン・ジニョン、イ・ウンジュ、シム・ウナ。