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男社会で女性は詐欺にあっている⁈インド映画『花嫁はどこに?』は女性の背中を押してくれるエンタメ作

 

 昨年、日本でも爆発的にヒットしたインド映画『RRR』の劇中歌「NAATU NAATU(ナートゥ ナートゥ)」がアカデミー賞の歌曲賞を受賞したこともあり、さらに注目を集めることになったインド映画。なかでも本作「花嫁はどこに?』は今年のアカデミー賞国際長編映画賞インド代表に選出されるほどの話題作です。

 実在した独立運動の闘士2人をモデルにした男たちの信念と熱い友情と戦いを描いた『RRR』はダイナミックなアクションエンタメですが、本作は全くタイプの違うふたりの女性を軸に、軽やかにコミカルにフェミニズムとシスターフッドを描いた作品で女性の心に刺さるエンタメ作。

 物語の発端は花嫁の取り違え。大安吉日で結婚ラッシュのときに、それぞれの花婿の家へ向かう途中で、同じ満員列車に乗り合わせたプールとジャヤ。2人とも赤いベールで顔が隠れていたため知らぬ間に入れ替わり、そのまま別の嫁ぎ先に連れて行かれてしまうのです。
 
 あどけない笑顔が可愛いプールは夫に頼りっぱなしで、彼に尽くし良き妻になることを目指していましたが迷子になり、駅にある屋台の女主人のマンジュおばさんの世話になることに。このおばさんをもうひとりの主役にしたいほど、その生き方、台詞が女性にとっては目からウロコ。

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 暴力を振るいお金を巻き上げる夫と息子を追い出し、ひとりで屋台を切り盛りする彼女は、「女はなんでもできるのに、男にとって不都合だからできないと思いこまされている」と考えて実行した女性。「この国の女性はみな詐欺(フロード)にあっている」とマンジュおばさんがプールに語る場面、日本も同じでは⁈と気付かされます。

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 凛とした美人で成績優秀だったジャヤは実はあることを胸に秘めてこの入れ替わりをチャンスと考えます。彼女が花婿家族と過ごすことによって「夫が好きな料理を作り続けているうちに自分の好みがわからなくなった」という姑を始め女性の親族に新たな目覚めを与えるのです。

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 プロデューサーは、スーパーヒット作『きっと、うまくいく』などの主演で国民的な人気を誇るアーミル・カーン。彼が審査員を務めるコンテストで本作の原案となる脚本を発掘し、女流監督キラン・ラオに託したことで、より女性に寄り添うリアルで細やかな演出になっています。インド映画にありがちなダンスシーンはありませんが、リズミカルなBGMがストーリーを盛り上げます。

 育ちも性格も全く異なる2人が、予期せぬ体験を通して新しい価値観と可能性に気づき、周りの人々を巻き込みながら幸せを掴むストーリーは、全ての女性の背中を押してくれる良作です。

◇ストーリー
 2001年、とあるインドの村。それぞれの結婚式を終えた2人の花嫁、プールとジャヤは、同じ満員列車に乗って花婿の家に向かっていた。だが、たまたま同じ赤いベールで顔が隠れていたことから、プールの夫のディーパクが勘違いをしてジャヤを家に連れて帰ってしまう。置き去りにされたプールは内気で従順、何事もディーパクに頼りきりで彼の家の住所も電話番号もわからない。そんな彼女をみて、屋台の女主人が手を差し伸べる。
 一方、聡明で強情なジャヤはディーパクの家族に、なぜか夫と自分の名前を偽って告げる。果たして、2人の予想外の人生のゆくえは?

【作品詳細】
『花嫁はどこへ?』

プロデューサー:アーミル・カーン、ジョーティー・デーシュパーンデー

監督・プロデューサー:キラン・ラオ  

出演:ニターンシー・ゴーエル、プラティバー・ランター

2024年|インド|ヒンディー語|124分|スコープ|カラー|5.1ch|原題Laapataa Ladies|日本語字幕:福永詩乃

応援:インド大使館 配給:松竹

公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/lostladies/

© Aamir Khan Films LLP 2024

10月4日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋他全国公開

 

村上淳子(むらかみあつこ)
映画ジャーナリスト/海外ドラマ評論家
雑誌『anan』のライターとして活動後、海外ドラマ、映画を得意分野に雑誌やWEBサイトに寄稿。著書に『海外ドラマ裏ネタ缶』(小学館)『韓流マニア缶』(マガジンハウス)『韓流あるある』(幻冬舎エデュケーション)ほか。共著に「香港電影城」(小学館)シリーズほか。