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初恋から18年の紆余曲折を描く日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』

 

 大ヒット作『余命10年』を監督した藤井道人が、祖父の国である台湾の映画陣たちと念願の日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』を創りあげました。

 アジアの情報に力を入れているエンタメパレスでは、今回、台湾サイドのことを中心に作品の魅力をお伝えいたします。

 今回、初めてエグゼクティブ・プロデューサーを務めるのはチャン・チェン。ホウ・シャオシェン、ウォン・カーワァイ、ジョン・ウーなど名監督作でその才能を輝かせ、『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)ではハリウッドに進出。また、短編監督やプロデュース業も手掛け、2018年にはカンヌ映画祭コンペ審査員に選出されるなど、中華圏を代表する国際派映画人である彼の新たな挑戦が本作です。
「『青春18×2 君へと続く道』は、親しい友人でありプロデューサーの黃江豐(ロジャー)さんが紀行エッセイを見たことから始まり、4年の時間をかけ脚本開発をしました。その後藤井監督が参加してくださり大きな力となりました。この映画の誕生は、天の時、地の利、人の和の様々なご縁が結びついた結果です。 長い間藤井監督の作品に注目しており、監督の映画の独特な魅力を高く評価していたため、撮影中は監督を深く信頼し、創作者としての監督の考えを尊重し支持をしました。シュー・グァンハンさんと清原果耶さんは非常に優秀な俳優です。二人の間で起こる化学反応を楽しみにしています」

 

 物語の始まりは 18 年前の台湾。高校生・ジミー(シュー・グァンハン)のアルバイト先に現れた日本から来た4つ年上のバックパッカー・アミ(清原果耶)。ひと夏を同じ店で働き過ごすことになった2人だったが、ジミーはアミに淡い恋心を抱き、次第に距離が縮まっていく。しかし、突然アミが日本へ帰ることに。気持ちの整理がつかないジミーに、アミは“ひとつの約束”を提案する。そして、18年の時が流れて‥‥。 

 台湾のスター俳優、シュー・グァンハン演じるジミーと、清原果耶演じるアミが「日本×台湾」、「18年前×現在」を舞台に紡ぐ、切なくも美しいラブストーリーが展開。日本の公開に先駆け、台湾では3月14日のホワイトデーに世界最速で公開され、初日興行収入No.1となるヒットを記録しました。

 ダブル主演となったシュー・グァンハンの起用について藤井監督は「ジミーを誰に演じてもらおうかと考えていたときに一番重要視していたのが、18歳と36歳のジミーをどちらも演じられることでした。台湾でたくさんの方に“18歳も36歳も演じられる、台湾で最高の俳優は誰ですか?”と聞くと、全員が“シュー・グァンハン”と答えたので会ってみたら、その日にジミーを演じてほしいとお願いしました」
 グァンハンの第一印象は、「本当にシャイで温かい男の子」だったそうですが、一緒に仕事をしてみたら、彼の演技に対する志の高さに支えられたこともあったといいます。
「台湾パートでは朝起きるシーンが何回かあったのですが、僕の思っていたイメージと違っていて、何回もテイクを重ねてしまったんです。何がダメなのか自分でもわからずどれかに良いものあるだろうとオーケーを出したらすぐに彼がやってきて、“本当に良いと思ってオーケーを出した?監督が本当に納得できるものを取るまで何回でも付き合うから、僕に気を使わないでほしい”と言ってくれて、本当にありがたかったです。そこで正直に“わからなくなっちゃったんだ”と言えました。彼と建設的に話し合いができてとてもやりやすかったです」
「撮影を通して仲良くなって台湾に弟ができたようでした」

 現在34歳のグァンハンは、2013年「潛入藍中籃」で初主演を果たし俳優デビュー以来、ドラマや映画で活躍。『時をかける愛』(19)で第55回金鐘獎の連続ドラマ主演男優賞にノミネートされ注目を集めました。とりわけ主演作『僕と幽霊が家族になった件』(23)は台湾映画史上第7位となる興行収入3.6億台湾ドル(約16億円)をあげる爆発的ヒットを記録。第96回米アカデミー賞国際長編映画賞部門の台湾代表にも選出されるなど、今年の台湾を代表する作品となりました。最近は台湾で公開されるスタジオジブリ『君たちはどう生きるか』のアオサギ役の吹き替え声優を務め、話題の韓国ドラマ『No way out』の出演も決定しています。

 『僕と幽霊が家族になった件』ではゲイの幽霊と結婚するハメになる警官を時にコミカルに時に切なく演じていたグァンハン。容疑者を逮捕するため暴走しがちで“動”の演技の上手さが目立ちましたが、『青春18×2 君へと続く道』で36歳のIT企業の代表を演じるときは額を隠した髪型で別人のような繊細でしっとりした演技を見せています。

 グァンハンは、「オファーを頂いた時は、初めての国際プロジェクト作品への参加だったので、とても興奮しました。同時に緊張もありました。“青春”のほろ苦さや甘酸っぱさを感じられる脚本でしたが、日本語の台詞もあったので、少し心配でした。ですが、通訳の先生も熱心に教えてくださり、僕も出来る限り覚えられるよう努力しました。藤井監督の演出はとても正確で、監督の想像の中に俳優を入り込ませる能力も素晴らしく、ご一緒できて嬉しかったです。言葉は違いますが、すぐに息がぴったりと合ったように思いました。今回、日本と台湾の異なる文化を体験することができました。撮影に関わることから食文化などの些細なことまで、どれも興味深く、学ぶことの多い撮影でした。多くの初めてを経験でき、楽しかったです!」

シュー・グァンハンは初の国際プロジェクト作の主演というプレッシャーを跳ね除け、受験生から大学生になるヤンチャな10代のジミーの演技では年上のアミのことが気になっているのに素直になれない感情をナイーブに表現。のちに自分の強味を活かしゲーム会社の代表になるも失脚。その後の日本への旅で自分の生き方を見つ直してアミへの想いを振り返る30代を見事に演じわけ、藤井監督の期待に答えました。

 3月27日に記者会見がホテル雅叙園東京で行われ、ダブル主演の清原果耶、藤井監督と登壇したグァンハンは、「こんにちは。おいしいごはんは食べましたか?」と食を大切にする台湾出身のグァンハンらしい挨拶で場を和ませました。

 来日した感想を問われると「うれしいです。大変興奮しています。台湾でこの映画が公開される際、監督や清原さんが台湾にいらしてくださいましたが、今回は逆に私が日本に来ました。お互いが旅をしているように感じます」

 撮影現場では日本語と中国語を教えあってコミュニケーションをとっていたそうで、「ご飯たべました?」「ありがとうございます」「あざーす!」を覚えたそうで、「あざーす!」は藤井監督から教わったとか。

 18歳と36歳のジミーを演じたグァンハンに自分との“共通点”と“違い”を問うと、「36歳のジミーは旅に出るのが好きだったり、旅を通して成長し、自分を発見する。そんな部分が自分に近いものがあると思いました。一方で18歳のジミーはどこか不確実性を持っている。ここが僕とは違うところです」

 日本パートで出番は少ないながらキーパーソンとなるのがジョセフ・チャン。ジミーが旅の途中で立ち寄る長野県松本の居酒屋の店主で松本の街を案内する役どころ。

 名作『藍色夏恋』の主役でデビューしドラマや映画で活躍。2012年『GF*BF』(ヤン・ヤージャ監督)で、第14回台北電影奨最優秀主演男優賞を受賞。2015年、北海道で撮影された岩井俊二とウェイ・ダーション、スタンリー・クワン監修、『恋する都市 5つの物語』(フー・ティエンユー監督)に出演。他にも『真夜中の五分前』(14/行定勲監督)やNetflixドラマ「深夜食堂 -Tokyo Stories Season2-」(19)に出演するなど日本とも縁が深い彼が日本人の役柄で流暢な日本語で印象的なシーンを演じているのも見逃せません。

 本作は台湾・日本のほか香港や韓国など世界10以上の地域で公開が決まっています。
藤井監督は「日本国内の人たちに観てもらうために映画を作ってきたんですが、海を越えて自分の作品を観てもらうためにどうすればいいかここ数年考えていて。待ってちゃダメだと自分から台湾に営業に行ったりしたんです。そんな中、プロデューサーのロジャーやチャン・チェンがチャンスをくれて。勇気を振り絞ると景色が変わる」と、決心の一作になったと熱い思いを語りました。

 「かけがえのない作品になりました」という清原果耶は「観てくださった方が初恋や青春の記憶を優しく包んで、前に進むきっかけになるような映画になることを願っています」

 グァンハンは本作は単なる青春やラブストーリーを描くだけの作品ではなく、「大人の魂が宿っている映画です。旅とは何か?を考えたり、過去を振り返ってみる機会を与えてくれる作品です」と作品の魅力を評しました。

 

【作品詳細】
映画『青春18×2 君へと続く道』
公開日:2024年5月3日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
出演:シュー・グァンハン、清原果耶、ジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳
監督:藤井道人
脚本:藤井道人
エグゼクティブ・プロデューサー:チャン・チェン
配給:ハピネットファントム・スタジオ
原作:『青春18×2 日本慢車流浪記』

©2024「青春18×2」Film Partners


※プレスリリース資料と記者会見を交え記事を構成。