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韓国ドラマ『 クイーンメーカー』に見る、人の上に立つ人のつくり方とつくられ方

初めまして!トラベルライターの松田朝子です。コロナによる渡航制限が始まった2020年から韓 国ドラマを見始めて、気付けば沼の真っ只中。

そんな私が最近面白いと思ったドラマは、『クイーンメーカー』。これは選挙戦にフォーカスした復讐劇なのですが、私にとっては他人事ではない ドラマでした。

というのも私には出馬経験があり、落選しましたが選挙戦体験者なのです。なの で見ていて胸が締め付けられるようなエピソードや、激しく頷いてしまうシーンやらがてんこ盛り。全11話をあっという間に見終えてしまいました。(以下、文中にネタバレあり)

『クイーンメーカー』のあらすじ

財閥系企業ウンソングループの戦略企画室長、ファン・ドヒ(キム・ヒエ)は、 社内きってのやり手フィクサー。でも、とあるきっかけで彼女は退職することになります。そして 今まで培った能力を活かし、1人の女性をソウル市長選挙へ送り込むのです。候補者となったの は、人権弁護士のオ・ギョンスク(ムン・ソリ)。2人の女性はタッグを組んで、一癖も二癖もある対立候補たち と熾烈な選挙戦を展開します。

 

ドヒを演じるキム・ヒエは90年代から活躍する国民的女優で、2020年高視聴率を叩き出し社会現象となったドラマ『夫婦の世界』で不倫夫に復讐する女医役で百想芸術大賞TV部門女性最優秀演技賞を受賞。

ギョンスク役ムン・ソリといえば映画『オアシス』(02)で脳性麻痺のヒロインを演じて強烈な印象を残しヴェネツィア国際映画祭で新人賞を受賞して以降、何度も映画賞を受賞している実力派。『クイーンメーカー』はキャリアも演技力も文句なしのベテラントップ女優の競演なのです。

ウンソングループは病院やデパートなど、ソウルで手広く経営する企業ですが、そのトップとなる ファミリーは、財力があるのをいいことにやりたい放題。不当に解雇された従業員たちはストラ イキを起こしており、中でも人権弁護士のオ・ギョンスクはウンソンデパートの屋上にテントを 張って立てこもっていました。

そんな折、ウンソングループの会長は、自分の娘婿をソウル市長選に出馬をさせるべく、ファン・ ドヒに協力を求めます。イケメンで人当たりの良い娘婿、ペク・ジェミン(リュ・スヨン)は実は、ファン・ドヒの 後輩秘書の死に関わっていたことを知って、協力を拒否。

するとファン・ドヒはウンソングループ をクビになってしまうのです。それだけではなく、ウンソングループ傘下の病院に入院中の父親に まで圧力がかかり、ファン・ドヒは窮地に陥ります。

そこで思いついたのが、対立候補を立てて ペク・ジェミンの当選を阻むことでした。

その適任者は、あの屋上に立てこもっていた人権派弁 護士のオ・ギョンスク。髪はボサボサで、ホームレスのようないでたちだったオ・ギョンスクが、 ファン・ドヒの指導のもと、トップレディ風に変身してしていく様子は見ていてワクワクします。

この辺りから、オ・ギョンスクは立ち居振る舞いから発言まで政治家っぽくなっていきます。さすが役者さん。一般(?)の立候補者はこの段階ではまだここまで変われないでしょう。こうし てファン・ドヒとオ・ギョンスクの市長選挙戦が開戦します。

対立候補はペク・ジェミンのみならず、自称「国民のしもべ」、ベテラン女性政治家のソ・ミンジョ ン(チン・ギョン)も参入して三つ巴の戦いに。中盤からは、その熾烈な戦いで一喜一憂する様子がノンストップで 展開します。本当の選挙ならば、政策がらみの舌戦大会なのでしょうが、ここではもろに足の 引っ張り合い。

家族が横領とか、愛人が妊娠とか、叩いてみたらみんな埃だらけ。フィクション だから「もっと暴け!」と思っている自分がいますが、実際にそれが自分の身に起こったらメン タル崩壊するでしょう。

自分も選挙前に党の偉い人に、「スキャンダルには耐えられるか?」と聞 かれたことを思い出しました。幸い何も起こりませんでしたけど。

 

 見ていて感情移入してしまったところは、オ・ギョンスクの家族とのやりとりでしょうか。選挙 戦で闘うためには、家族の協力と精神的なサポートが立候補者の心の支えとなります。オ・ギョ ンスクも家に帰れば1人の母親。高校生の息子は最初、母親の不在を責め、どんどん反抗的な態度 をとるようになっていきます。

経験上、母親からしたら最も扱いにくいのがこの時期の男子。そし て、息子は警察沙汰の事件を起こしてしまいます。でもそれは敵陣営が仕組んだ罠。気づいた時点 で、オ・ギョンスクは出馬を諦めようとしますが、全てを悟った息子に今度は励まされるのです。

また、物静かなオ・ギョンスクの夫も、彼女が最初出馬を迷った時に背中を押してくれた1人。影 の『クイーンメーカー』はこの夫ではないかと思います。

選挙が終わったあと、ファン・ドヒは自分の身を挺してウンソングループへの復讐を果たします。 何もそこまでしなくとも...ですが、そこに1人の男が「力を貸してほしい」とやってくるのです。 もしかしたらこの先、『クイーンメーカー』には続編ができるかもしれませんね!

Netflix シリーズ『クイーンメーカー』独占配信中

 

松田朝子(まつだともこ トラベルライター/トラベルジャーナリスト )

東京都出身。4代に渡る銀座生まれの銀座育ち。生家は銀座8丁目で料亭を経営(戦前より2009 年まで) 2021年、東京都議選に中央区から選出される。アルゼンチンタンゴ歴15年。調理師免許あり。日本旅行作家協会会員。ペンクラブ会員。

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