エンタメパレス

映画、海外ドラマ、本を中心に、執筆メンバーの激推し作や貴重な取材裏話など、エンタメ好きの心に刺ささる本音どっさりのの記事をお届けします。

宝塚ファンを歓喜させた3つの「まさか!」 劇団☆新感線『薔薇とサムライ2 −海賊女王の帰還−』

チケットが取れず劇場で観られなかった劇団☆新感線『薔薇とサムライ2』を12月13日ディレイビューイングで鑑賞。これは宝塚歌劇マニアなら10倍楽しめる作品だったので、ファンの視点でその3つの理由を解説します。

 ざっくりしたストーリーは、女海賊アンヌ(天海祐希)が、天下の大泥棒石川五右衛門(古田新太)の協力を得て王国の混乱を収め国王となって十数年が過ぎた頃、王国は新たな危機に直面し、アンヌは国民を守るために五右衛門とともに再び立ち上がる
…。

f:id:manareax:20221215232217j:image

 天海祐希(敬称略)は男役10年といわれる宝塚歌劇で、わずか入団6年で史上最短でトップスターに就任したレジェンドな存在。

そんな天海を観にきた宝塚ファンの心をくすぐる、いやキュン死させる仕掛けがどっさりでした。

天海祐希の伝説の男装、黒燕尾服を再現

 まず、ひとつめは「男装」
舞踏会に現れた噂の怪盗紳士(記憶をなくしたアンヌ)は、黒髪短髪で黒燕尾服です。宝塚ではたいていフィナーレの男役が黒燕尾で華麗なダンスを踊るのがお約束かつファンの眼福ポイント。
 そう、退団から27年後に黒燕尾で華麗に踊る天海祐希を再現させた劇団☆新感線に感謝感涙!

目で殺す天海ウィンクのどアップの威力

 ふたつめは天海の強烈なウィンク。宝塚ではショーのとき客席に向けてスターがウィンクするのですが、今回はもう大画面でどアップのウィンクに息が止まりました。

f:id:manareax:20221215232340j:image

宝塚ファン念願の天海トートをパロディ化

 みっつめは宝塚のパロディ。2幕では天海が 黒のロングコートを着て、美しいプラチナブロンドのロングヘアで登場。これは、まるで宝塚の人気作品『エリザベート』の黄泉の帝王トート閣下です。

 実は、天海が退団後に上演された『エリザベート』 しかしファンにとっては天海のトートを観たいという願望が強くありました。その実現に小躍りが止まらない。

 とはいえ、そこはクセもの劇団☆新感線、トートが恋したエリザベートに唄いかける切ない歌詞「最後のダンスは俺のもの〜」を、「最高のタンスは俺のもの〜」と箪笥を担いだ天海に歌わせて、もうめちゃくちゃ可笑しかった!

 さらに、舞踏会の場面ではあの『ベルサイユのバラ』の「愛あればこそ」をパロったとしか思えない歌詞が…。「愛、それは甘く〜」が「愛、それは罪〜」に。

どれもこれも確信犯で、ニンマリしてしまいました。

 ちなみに本作が初舞台のイケメン神尾楓珠が宝塚の次期トップといわれる朝美絢(愛称アーサ)と舞台メイク顔がそっくりというのも嬉しい発見でした。

 一見、奇想天外でありながら、国同士の小競り合いから戦争へ発展してしまうからくりや国民を操ろうとする王族の思惑など現代の世相が盛り込まれ、さらに世代交代というテーマも描かれた本作は、ディレイビューイングでも拍手したくなるほどワクワクさせてくれたステージでした。

 「映画館でも拍手」運動を広めたいと思いつつ、やっぱりナマで観劇したかった〜!が本音です。

2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演 SHINKANSEN☆RX『薔薇とサムライ2−海賊女王の帰還−』
2022年11月1日〜12月6日新橋演舞場ほかにて上演。
作:中島かずき 演出 :いのうえひでのり 出演:古田新太 天海祐希 石田二コル 神尾楓珠 西垣匠 早乙女友貴 森奈みはる 高田聖子 粟根まこと 生瀬勝久 他

村上淳子(演劇も好きな海外ドラマ評論家/映画ジャーナリスト)