『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』のスタンフォード役や『ホワイトカラー』のモジー役などを演じた名脇役ウィリー・ガーソンが57歳の若さで他界。ドラマでの活躍とプライベートで彼の魅力を振り返ります。
丸い眼鏡に坊主頭、小太り体型で画面にちょっと出てきただけで目を引くウィリー・ガーソンは、その個性が主役を見事に引き立ててしまう名バイプレイヤーでした。
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私の大好きなドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』 「ホワイトカラー』『HAWAII FIVE-0』 の3作品すべてに印象的なキャラクターで登場していただけに、早すぎる死が本当に残念でなりません。
プロフィール
ウィリーは1964年2月20日生まれ。アメリカ・ニュージャージー州ハイランド・パークの出身です。俳優の道を目指したのは13歳のころ。NYの演劇スクールで学び、地元のハイランドパーク高校へ入学。卒業後はウェズリアン大学に進学し、演劇の学位を取得。その後は、名門イェール・スクール・オブ・ドラマ(イェール大学の専門大学院)で美術修士号を取得しています。
俳優への夢を叶え、1986年のデビュー以降、着実にキャリアを重ね、約40本以上のドラマに出演したのです。
加えて、ポーカーが得意で2003年のリアリティ番組「Celebrity Poker Showdown」に出演。決勝戦で負けてしまったのですが、その冷酷なプレイスタイルから”Evil Willie.(悪魔のウィリー)”と呼ばれる意外な一面もありました。
最後の作品となったのは、『セックス・アンド・ザ・シティ』の続編『And Just Like That…』
すでに、撮影は終えていたそうで、同ドラマのエグゼクティブプロデューサー、マイケル・パトリック・キングは、「『セックス・アンド・ザ・シティ』ファミリーは、自分たちの一部を失いました。ウィリー・ガーソンは私たちの素晴らしい仲間でした」と声明を発表。「『And Just Like That…』撮影中、彼は毎日、作品に献身的に取り組んでくれました。病身にも関わらず、彼の全てを捧げてくれたのです。俳優、人間として、彼の素晴らしい才能の数々は、皆に惜しまれることでしょう。この悲しく、重苦しい時を、喜びと光に満ちた彼との思い出に慰めてもらいます」と追悼しました。
シングルファーザーで息子を溺愛
プライベートでは、結婚歴なし。ずっと独身でしたが、ピープル誌によると2008年に当時7歳だったネイサンに初めて出会い、1年間余りにわたる書類手続きの末、2010年に養子に迎えたそう。LAで行われた養子縁組フェアでネイサンに出会ったときに運命を感じたといいます。
ウィリーはネイサンが養子になった日に、自身のインスタグラムで「常に私の人生最高の日」とコメントしていました。
『セックス・アンド・ザ・シティ』のゲイのスタンフォード役があまりにはまり役だったため、彼自身もそうだと思われがちですが実はストレート。結婚して子供を持ちたいという気持は強かったのですが、結局シングルファーザーを選んだそうです。
血の繋がりはないもののふたりの絆は強く、一時、パパの愛情を独占したいネイサンがウィリーの結婚に反対。ウィリーも将来的には結婚するかもしれないけど、いまは考えられないと。
愛するパパの死にネイサンさんはインスタグラムへの投稿で、「とても愛しているよ、パパ。安らかに。あなたの冒険のすべてを分かち合い、これほどまでに多くのことを成し遂げられたことをうれしく思います。あなたを誇りに思います」とコメントしました。
とはいえ、まだ大学生の最愛の息子を残していかざるえなかったウィリーの心の残りはどれほどだったかと思うと胸が痛みます。
◇『セックス・アンド・ザ・シティ』スタンフォード役
ニューヨークに住む30代シングルの4人の女性の恋愛と仕事を描き、世界中で大ブームを巻き起こした『セックス・アンド・ザ・シティ』(98~04)その後、映画化もされた本作で、ウィリーは主人公のコラムニスト、キャリーの親友スタンフォードを演じました。タレントエージェントを経営する彼は、仕事柄センスがよく、情報感度も高い。キャリーの恋愛や仕事の相談に対するアドバイスは時に辛口ですが、その根底には優しさと愛情がありました
ウィリーのコミカルかつナイーブな演技でスタンフォードの魅力的に。明るくチャーミングで一緒にいるだけで楽しくなる。こんな親友が欲しい!と観ている誰もが思うキャラクターでした。
キャリー役サラ・ジェシカ・パーカーとは、映画『マーズ・アタック!』(96)で共演して以来、20年来の友人だそうで、養子縁組を検討している時に、代理母出産で双子を授かったサラに影響を受けたとPeople誌に語っていました。
サラとは食事やショッピングに一緒に行くこともあったそう。ウィリーの訃報に大ショックを受けたサラはすぐには追悼コメントをだせないほど打ちのめされていました。
◇ 「ホワイトカラー」モジー役
天才詐欺師ニール(マット・ボマー)と敏腕FBI捜査官ピーター(ティム・ディケイ)のコンビが、事件を解決へと導くサスペンス作『ホワイトカラー』(09~14)では、ニールの友人であらゆる犯罪に精通しているモジー役を演じました
一見、人の良さそうな風貌ですが、長年犯罪稼業で生計を立ててきたことから、様々な情報に精通。ニールが必要とあれば、機密情報から最新技術まで何でも手に入れる頭脳明晰で信頼できるキャラクターが、ウィリーにぴったりでした。
実は「セックス・アンド・ザ・シティ」のスタンフォード役が高評価を得たものの、自分自身とはかけ離れたキャラクターだったため「ホワイトカラー」の役柄について撮影が始まる前に、プロデューサーと話し合って、自分に近いキャラクター設定にしたんだそう。
2012年に日本で行われた『ホワイトカラー』のインタビューで
「モジーは僕がこれまで演じた中で、間違いなく自分に最も近いキャラクターだと思う。彼のユーモアのセンスや、願わくば知性もね(笑)。それから彼の見た目も僕自身に最も似てるし、彼が着る服も僕が普段着ている服ととても似ている。実は今着ている服は、自前なんだけど、これはモジーの服なんだよと言っても、違和感はないよ(笑)。似ていないところは、そうだなー、僕は犯罪者じゃないから、モジーみたいに大胆じゃないな」と語っています。
本作では、なんとシーズン2第11話「罠」では、息子のネイサンとの初共演し、シーズン5第7話では監督デビューも果たすなど、ウィリーにとっては嬉しい初体験の作品でした。
出典元:http://dramanavi.net/column/2012/10/post-197.php
◇『HAWAII FIVE-0』ジェラルド役
ハワイを舞台に犯罪に立ち向かう、特別捜査チーム「ファイブ・オー」の活躍を描いた大人気刑事ドラマ『HAWAII FIVE-0』(10〜20)
にも出演。レギュラーではありませんが 美術鑑定士であり、自身も絵描きとして高い技術を持つジェラルド・ハーシュ役でシーズン5第11話「盗まれた名画」から登場しました。
シーズン6以降も毎シーズン登場し、警察向けの清掃会社を起こし転身して捜査に協力するうちに、ファイブオーのメンバーのオハナ(ハワイ語で家族)のような存在になっていきました。
ウィリーは大学院で学び美術修士号を取得しているだけに、この役どころはきっと楽しく演じたのではと推察できます。
膵臓癌のため、短い闘病生活の末、天国へ旅立ったウィリー。でも、私たちの記憶の中では、愛されキャラのスタンフォード、モジー、ジェラルドとしてずっと存在し続けるに違いありません。
村上淳子(海外ドラマ評論家・映画ジャーナリスト)