本作は、1978年に捲き起こった日本で初めてのパンク・ロック・ムーブメントを描くストーリーです。
それは当時の日本の音楽シーンに対する反発と新しい表現への渇望から生まれた時代の潮流。ストリートから生まれたロッカー達の熱気に溢れた世界でした。 彼らの最大の功績は、それまでの日本のロックを変えようとしたこと。大手レコード会社に頼らずライブハウスを拠点に、自分たちの力で音楽を作り発信した。これは、後の日本のインディーズ(自主制作)文化が生まれるきっかけとなり、1980年代以降の多くのバンドに計り知れない影響を与えました。

エンタメパレスで『元音楽プロデューサーの今だから言えること』を連載中である元ソニーミュージックの今泉雅史さんに、本作を考察していただきました。今泉さんは劇中に登場する『ロボットメイア』のモデルとなった『ゼルダ』の担当でもありました。
今泉さんは本作をロックに深い関わりがある原作者、監督、脚本家だからこそ生み出された世界観だと語ります。
「 地引雄一さんというこの時代に意図せず飲み込まれた写真家のドキュメントが原作になっていますが、彼は自らのインディーズレーベルを立ち上げ東京ロッカーズに続いて多くのアーティストを世の中に送り出した人。
監督・田口トモロウは世間では俳優、ナレーターのほうが知られていますが『ばちかぶり』のボーカル、脚本・宮藤官九郎も『グループ魂』でバンド活動をしている。
そんなロックに深い関わりがある3人のトライアングルが、ロックンロールという熱量だけで突破した、わずか1年を凝縮して描いている凄味を感じました」
「今のようにコンプライアンスを守るとか、タイパ、コスパを価値観とする時代とは全く遠く離れてしまったけど、ロックの原点というのは本作に出てくるような自分自身を解放するアーティストだと思うんですよね」
地引さんをモデルにしたユーイチを演じるのが峯田和伸、『リザード』のモモヨをモデルにしたのは『TOKAGE』のモモ役を若葉竜也。ふたりがW主演で、ヒロイン的な存在は『ZELDA』の小嶋さちほをモデルにした『ロボットメイア」さち役の吉岡里帆です。



小嶋さんをモデルにした吉岡さんはいかがでしたか?
「最初、聞いたときはイメージが違うなと。ところが映画を観たらベースの弾き方や視線の合わせ方がまるで本人、完コピ。一瞬しか出てこない『ゼルダ』ボーカルのサヨコも所作がまんまで驚きました。
それは他のアーティストも同じく、当人に似てると言うより当人そのもの。そこに監督と脚本家の強いパッション=執念であの時代を再現をしたに違いないです」
劇中では、モモヨとさちは恋人関係でしたが、
「リアルにそうだったので、2人の街を走るシーンが印象的でした。『ゼルダ』のデビューも彼がプロデュースでした。
その後、さちほは『ボ・ガンボス』ボーカルのどんと結婚して沖縄に移住。不幸にも彼が他界した後も音楽活動を続け、スピリチュアルをベースにしたイベントも行っています。サヨコも同じく音楽とスピリチュアル二刀流です」
本作を観て元音楽プロデューサーとして伝えたいことは?
「1978年はメジャー中のメジャーとなったサザンオールスターズがデビューした年というのが感慨深い。
東京ロッカーズの人たちのなかには売れたくなかった、売れるのは恥、魂を売るという考え方の人たちもたくさんいたと思うのですが、それは一時の青春の過ちというべきものではないかと…。売れればいいというものではないが売れないと誰にもわからない、主張が伝わらない。だから売れることも考えて、自分たちのロック魂を燃やすべきだと思います。
この作品がきっかけとなって、登場するバンドに新たな光が当たることを願っています」
◇ストーリー
1978年、ラジオで耳にしたセックス・ピストルズに突き動かされて上京したカメラマンの青年ユーイチは、小さなロックミニコミ誌「ロッキンドール」をきっかけに、ライブハウスを訪れる。そこは音楽もバンドも観客たちも何にも縛られない生のエネルギーにあふれた場所で、ボーカルのモモが率いるバンド「TOKAGE」のライブに衝撃を受けたユーイチは夢中でシャッターを押す。正式にカメラマンとして撮影を依頼されたユーイチは、彼らと交流を重ねていく。やがて彼らの音楽は若者たちを熱狂させ、そのムーブメントは「東京ロッカーズ」と呼ばれ日本のロックを塗り替えることとなる。
◇作品情報
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
公開日:2026年3月27日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか 全国公開 原作:地引雄一「ストリート・キングダム」 監督:田口トモロヲ 脚本:宮藤官九郎 音楽:大友良英
出演: 峯田和伸 若葉竜也 吉岡里帆 仲野太賀 間宮祥太朗 中島セナ 大森南朋 中村獅童
制作プロダクション:ダーウィン 企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
TOHOシネマズ日比谷ほか 全国公開!
公式サイト:https://happinet-phantom.com/streetkingdom
公式 X :@streetkingdomjp
公式 Instagram :@streetkingdomjp
今泉雅史(音楽・落語プロデューサー、プランナー)
1973年広告会社入社。コピーライターとして企業広告、日産チェリー等を手がける。1975年、ソニーミュージックエンターティンメント(当時はCBSソニー)に入社。洋楽宣伝、大阪営業所販促を経て1980年より邦楽プロデューサー。主な担当アーティストはHOUND DOG(ハウンドドッグ)、PSYS(サイズ)、ZELDA(ゼルダ)、すかんち、the東南西北、溝口肇、白井良明(ムーンライダーズ)など。2007年、カタログマーケティング中心のソニーミュージックダイレクトに移動、YMO、シーナ&ロケッツ、戸川純、等アルファレーベルを担当、2009年から伝統芸能、落語を中心のレーベル、来福を立ち上げる。主な作品、古今亭志ん朝、柳家小三治のDVD全集。春風亭昇太中心の新作ユニットSWA(すわ)のCD.DV D等。2012年退職。フリープロデュサーとして、落語イベント‘’渋谷に福来たる"等のの企画、制作に携わる。




