『陳情令」で大ブレイクしたシャオ・ジャンが、名監督ツイ・ハークとタッグを組む。しかもその作品が中国では知らない人はいない金庸の武侠小説『射鵰英雄伝』の映画化とあって期待は高まるばかりでした。
まず結論からいうと、スペクタクルかつ叙情的な映像、技の波状攻撃のアクション、壮大な戦闘シーン、ドラマテックなストーリーが融合。期待を裏切らない見応えたっぷりの作品でした。
中国では前売券だけで約76億円を突破。初日興収55億円を記録し大ヒットになったのも納得です。

物語の舞台となるのは北宋末期。金の侵攻により国は滅び、南宋が建国されるも屈辱の従属を強いられていました。その頃、蒙古ではチンギス・ハーンが勢力を拡大し、金との戦いが激化。
蒙古でチンギス・ハーンによって育てられた宋人の青年・郭靖(かくせい)は、黄蓉(こうよう)と出会い桃が咲き乱れる桃花島での修行を経て成長していきます。いつしか愛し合うようになる2人ですが、陰謀と戦乱が2人を引き裂き、試練に次々と襲われることに。そして郭靖は国と民族、黄蓉のため、信念の拳で宿命に立ち向かうことになるのですがー。
この郭靖をシャオ・ジャンが演じているのですが、はじめは未熟ながら「九陰真経」(武術の秘伝)をマスターしてスーパーヒーローへと変貌。真っ直ぐで真摯な性格で、離れ離れになった愛する人を探し続けるタフで情が深いキャラクターはまさにハマり役でした。

アクションは超速で華麗かつ壮絶。炎を操る絶技で躍動するシーンには目を奪われずにはいられません。
中華スーパーヒーローでは、いちばん“華”があると言っても決して言い過ぎではないほど。シャオ・ジャンを主役に抜擢したツイ・ハークの目に狂いはなかったといえそうです。
郭靖と愛しあう黄蓉にはジュアン・ダーフェイ(莊達菲)が扮します。ドラマ「春うらら金科玉条」で演じた父親の無実の罪を晴らそうとする訟師(現代の弁護士)役同様、正義感があり媚びない反面、郭靖には一途なヒロインを魅力的に演じました。

ハーンの娘で郭靖の許嫁コジン役のチャン・ウェンシン(張文昕)は、無邪気さと純粋さと強さを併せ持つキャラクターを印象的に好演。
この同じ相手を愛したふたりの葛藤からのシスターフッドの心情が切なく映し出されるのも良き。

それにしても九陰真経の秘伝書を狙う郭靖の宿敵・西毒を演じたレオン・カーフェイ(梁家輝)には驚愕でした。しだいに特殊メイクでモンスター化。普段のスタイリッシュなイメージは見る陰もなしで名優の果敢な挑戦に脱帽です。

最後に郭靖がハーンに訴える「真の英雄とは領土を誇らず民に寄り添い憐憫の情を持つ者です。それこそが本当の義侠の土です」という台詞が時代劇という器の中に反戦のメッセージが込められ、現代の世界情勢を憂える者にも刺さります。

長い原作を1本の映画に収めるために、エピソードを詰め込まざるえなかったところがありますが、圧倒的な映像の迫力で最後まで息もつかせません。
シャオ・ジャンのファンはもちろんこと、中国の歴史や武侠映画好きの人にもぜひ見てほしい中華エンタメ大作です。
◇ストーリー
北宋末期、金の侵攻により国は滅び、南宋が建国されるも屈辱の従属を強いられていた。その頃、蒙古ではチンギス・ハーンが勢力を拡大し、金との戦いが激化。蒙古で育った宋人の青年・郭靖は、黄蓉と出会い桃が咲き乱れる桃花島での修行を経て成長していく。いつしか愛し合う二人だったが、陰謀と戦乱が二人を引き裂き、試練が次々と襲う。郭靖は国と民族、そして黄蓉のため、信念の拳で宿命に立ち向かう。二人は再び巡り合うことができるのか。愛と戦乱が激しく交錯する、切なくも熱い宿命の物語。
◇作品情報
『射鵰英雄伝』
2026年2月6日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督:ツイ・ハーク(徐克) 出演:シャオ・ジャン(肖戦)、ジュアン・ダーフェイ(莊達菲)、レオン・カーフェイ(梁家輝)、フー・ジュン(胡軍)ほか 字幕翻訳:島根磯美 原題:「射雕英雄传:侠之大者」 配給:ツイン 上映時間:147分
公式サイト https://shachoeiyuden.com/
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村上淳子(むらかみあつこ) 海外ドラマ評論家/映画ジャーナリスト
著書『海外ドラマ裏ネタ缶』(小学館)『韓流マニア缶』(マガジンハウス)『韓流あるある』(幻冬舎エデュケーション)ほか。共著『香港電影城』シリーズ(小学館)ほか。 (社)日本ペンクラブ 国際委員会委員
ブログ「海外ドラマ評論家・村上淳子のLOVEドラマ&LOVEハワイ」 https://ameblo.jp/mikepon1204/




