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『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』大ヒット記念 不滅の香港映画レコメンド大会①

 トップバッターを飾るのは渡邊哲也さん。「香港電影城」シリーズ1~5巻 「新・香港電影城 香港スター伝説」(各、小学館)の元編集長に語っていただきました。

◾️ レコメンド作品『ブレイキング・ニュース』◾️

 『トワイライト・ウォリアーズ』のリッチー・レンが脇で光ってましたね。リッチーが物語の縦軸となる部分を受け持っていますよね。妻子の復讐に狂的なまでに固執するところも大げさな演技ではなく抑制しながら、しかし一歩も引かない感じを出していました。もう還暦近いのかな、渋くいい役者になっています。

 彼の出演作で最も好きなのはセシリア・チャンと共演した『星願 あなたにもういちど』(99年)なのですが、今回は香港ノワール作品を選びたくてジョニー・トー監督の傑作『ブレイキング・ニュース』(04年)を選びました。最近、Huluで見直しましたが映像がキレイです。アマゾンプライムでも見られます。

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 ジョニー・トー監督が脂の乗っていた頃(前年に『PTU』、同年に『柔道龍虎房』、翌年『エレクション』を撮った時期)の活劇で、今回再見しても少しも古びてないですね。リッチー・レンは本土から来た強盗団のリーダー役です。
 この強盗団(5人だったかな)の隠れ家を突き止めて急襲する刑事&警察官。冒頭いきなり緊迫感溢れる滑り出しなのですが、これがカメラの長回しで約7分間、敵に発覚されてからすさまじい銃撃戦が勃発し、手りゅう弾も爆発する壮絶な攻防をワンシーンワンカットで撮っています。

 もうこれはどれだけ段取りや打ち合わせやリハーサルを重ねたんだろうと思うような名シーンです。リッチー・レンは毅然としてカッコ良く、彼が少しも動揺せず香港警察と撃ち合う姿を見ると凶悪犯なのに応援したくなります。

 一方の香港警察側のリーダーは、やはりジョニー・トー組の常連ニック・チョン。無鉄砲で向こう見ずな刑事役を演じていて、ニック・チョンも生き生きしています。

 あと、もう一人の主役がケリー・チャン。この映画でのケリーの存在感がすごかった。彼女の最高傑作ではないかな。ケリーは本作では香港警察のエリート指揮官を凛々しく演じています。彼女は、警察が取り逃がしてしまったリッチー・レンたち強盗団の潜伏先での大掛かりな逮捕劇をメディアに露出して一種のショーにしようと提案します。ここから始まる警察側と立て籠もる犯人側のメディア心理戦も面白い。
 このアパートにはシングルファザーの林雪が住んでいたり、やはり本土から来た殺し屋(ユウ・ヨン好演!)が潜んでいたり、予期せぬ展開が待ち受けています。 

 めちゃくちゃ面白い、濃密な91分。ぜひぜひ見てみてください!


◇『ブレイキング・ニュース』あらすじ
香港の街中で、ユアン(リッチー・レン)率いる強盗団のアジトを見張っていた香港警察のチョン(ニック・チョン)・チームと強盗団との銃撃戦が勃発。警察は強盗団を取り逃がすだけでなく、たまたま居合わせたTVカメラマンが映像を撮っていたため、メディアを通じて大きな非難を受ける。市民の信頼を取り戻すために警察は、組織犯罪課の新任指揮官レベッカ(ケリー・チャン)が提案したワイヤレスカメラを装着した機動部隊が犯人逮捕のライブ映像をTVで放送することを決定。威信を回復するため逮捕の瞬間をTVで実況中継しようとする警察と、民家に篭城した犯人グループとの最終決戦の結末はいかに…。