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香港映画界最大のヒット作 『トワイライト・ウォリアーズ  決戦!九龍城砦』初見参!

 

ルイス・ク―扮する龍捲風の雄姿! 九龍城砦を仕切る風格ある大親分。

 香港で見てきた友人知人から、この映画のすごさ面白さを聞かされ続けてきた作品の初見参! まさに待ちに待った日がやってきた。

 11月3日(土)は雨がしとしと降るうす寒い日であったが、身体の中は期待度で熱気が爆上がりだった。観客は皆そうだっただろう。
 東京・YEBISU GARDEN CINEMA「香港映画祭 Making Waves – Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」開催2日目朝一番の上映だ。
 上映前にアクション監督の谷垣健治、キレた悪役を見事に演じた俳優のフィリップ・ン(伍允龍)、若手の注目株テレンス・ラウ(劉俊謙)、およびプロデューサーが登壇し挨拶。いやがうえにも盛り上がる。早く見たい!

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.

 『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』は噂に違わず素晴らしい作品だった!
 それも80年代の香港映画全盛期を想起させる熱気と情感と男気に溢れるアクション映画だった。サモハン(洪金寶)、ルイス・ク―(古天楽)、リッチー・レン(任賢齊)、そしてアーロン・コク(郭富城)など香港映画界のレジェンドたちと若手俳優陣の競演も見事。そしてなにより谷垣健治印のスピード感満載のアクション演出が炸裂し、クライマックスでは興奮して観客席でじっと見ていられなかったほどだ(笑)。本作については今後きちんとしたレビューを書きたいと思っている。

 一昨年末、谷垣健治さんに『シャクラ』についてのロングインタビューをしたときに彼がこの作品を編集中だと言っていたのを思い出した。まさかこんなすごい映画を作っていたなんて!

『シャクラ』公開記念!アクション監督谷垣健治氏スペシャルインタビュー① - エンタメパレス

 本作では1993年に取り壊された魔窟・九龍城を、製作費の1/6ともいわれる5,000万香港ドル(日本円=約9億円)をかけて再現されたことも大きな見どころだ。
 筆者の柚木は、1992年、取り壊し前の、住民が退去したあとの廃墟となった九龍城しか見たことがないのだが(写真を載せておきます)、80年代は日本人観光客が1人でふらと入ると帰ってこられないとの噂があった。

 劇中、啓徳空港に着陸する飛行機が上空すれすれに飛ぶシーンもリアルで圧巻だった。

1992年、取り壊し前の九龍城の入口の一つ。柚木撮影。

 本作の原作は「九龍城寨」で作者の余兒はインスタグラムを見ると若い作家のようだ。「九龍城寨」「九龍城寨2:龍城第一刀」「九龍城寨3(完結篇):江湖火鳳凰」とこの作品は3部作らしい。

 さて話を戻そう。
 映画上映後、興奮が冷めやらない雰囲気のなかフィリップ・ユン、テレンス・ラウ、谷垣健治とプロデューサーが登壇した。観客のQ&Aの興味深いコメントを拾ってみよう。

左、谷垣健治氏、そのとなりがテレンス・ラウ、右に一人置いてフィリップ・ン

フィリップ・ン:ソイ・チェン(鄭保瑞)監督は俳優があらかじめ準備してくるのを嫌います。なので素のままで入ったら監督にいきなり「観客はおそらくあなたの役を誰が演じているのか分からないと思いますよ」と言われました(笑)。「え? どういう意味なんですか?」と聞くと、衣装の人から扮装3点セットを見せられました。長髪のカツラ、髭、どでかいサングラス(笑)。 これじゃ確かに誰だか分からない(笑)。 

 ソイ・チェン監督はそれぞれの役柄についてキャラの方向性を的確に指示します。トニー・ウー(胡子彤)の演じた十二少という役については髪をいつも気にしていて乱れたらすぐ直す癖があるとか、僕の演じた王九については笑う時に特徴出してねと(劇中の不気味なインパクトのある笑い声を再現してくれて、観客は大うけだった。サービス精神があり好感)。

 観客から、フィリップ・ン演じる気功の達人・王九が無敵すぎてリアリティ・ラインを超えそうだったと質問・意見が出たときに、「信じないでください(笑)。実際の僕は強くありません」と笑を取り、隣のテレンス・ラウにぶたれて大げさに痛がってみせ大ウケしていた。
 どんな武器で打たれても刺されても死なないという役なので大変です。撮影中、バンバン殴られても笑いながら平気な顔をしていなきゃいけない(笑)、カットがかかるとへたり込んでもう息絶え絶えで大変でした(笑)。でも健治さんのアクション演出が独創的であると同時に丁寧に安全に設計されているのでほんと感謝したいです。

フィリップ・ン熱演怪演の悪役、鉄人王九!

 次は谷垣健治さん。観客の質問でワイアーワークのトレンドは?と聞かれて

谷垣健治:矛盾するようですが僕はワイヤー嫌いなんですよね(笑 大ウケ)。

 ワイヤーでぴゅんと飛ぶようなアクションは好きではないんですよね。もちろんワイヤーは使いますが、ワイヤーを使ってますという感じではない使い方。例えば、アクションの初速をバーンと迫力を出すようなスピード感ある使い方で効果的に使いたい。だからトレンドなんてないといいますか(笑)、ワイヤーを使ってスーパーヒーローになりました的な感じにはしたくないですね。

 この谷垣さんの答えにフィリップ・ンが共感のグッド!の仕草をしたのが印象に残った。

 谷垣健治のアクション演出のポリシーと意地を示した見事な答えだった。

 俳優2人に、谷垣さんの演出したアクションで大変だったのはどのシーンですか?という観客の質問に、フィリップもテレンスも「全部!」(笑)と答えた。

 中でも一番大変だったのはクライマックスシーンでしたとテレンスが答えて、
テレンス・ラウ:僕についていえば15時間ぶっ続けで撮影したこともありますし、特にラストのバトルシーンの時はもう全員ほんとにヘトヘトで全員ケガしてる状態でした(谷垣さんが図らずも劇中人物と同じだったんですよねと合いの手をいれて)、僕も24時間ほとんど寝てないような状態で、それは監督も谷垣さんもスタッフの皆さんも同じでした。僕が思うに、現場の大変さ真剣さと劇中の登場人物の追い詰められた感じはシンクロしているんですよね。
 テレンス・ラウが演じた「城寨四少」(九龍城4人組)の一人、信一はバイクを駆って九龍城の迷路を走り回る! ナイフの名手でもありとにかくクールでカッコいいい! テレンスはこの映画公開後、日本でかなり人気が出るのではないかな。

バイクにまたがるテレンス・ラウの雄姿! 右はトニー・ウー(胡子彤)扮する十二少

 プロデューサーさんも含めてもっといろいろ話を聞かせてくれましたが、涙を飲んで割愛する。続編を準備中だが大変だというプロデューサー発言に観客は大きく盛り上がった。また彼らに会えるかも!

 ここで他の配役のこともチラと触れておきます。
 数奇な運命に導かれて九龍城砦に逃げ込む主人公の陳洛軍役は歌手でもあるレイモンド・ラム(林峯)、トニー・ウー扮する十二少、ジャーマン・チョン(張文傑)扮する四仔が、テレンス・ラウ演じる信一と「城寨四少」を熱演している。それぞれ個性豊かなこの4人が魅力的だ。

あらすじを公式サイトから載せておきます。

九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)――そこは、かつて無数の黒社会が野望を燃やし、覇権を争っていた。1980年代、香港へ密入国した若者チャンは、黒社会のルールを拒み、己の道を選んだために組織に目を付けられる。追い詰められたチャンが命がけで逃げ込んだ。
先は、まさに運命が導いた九龍城砦だった。彼はここで3人の仲間と出会い、
深い友情を育んでいく。しかし、九龍城砦を巻き込む抗争が激化する中、チャン
たちはそれぞれの信念を胸に、命を賭けた戦いに挑むことになる――。

↓公式サイト

https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/

 

本作品は<エンタメパレス>誌上に有持さんが香港公開の時にレビューを書いています。名レビューです。
↓こちら

映画『九龍城寨之圍城』観賞記 香港映画史上最高のアクションがここに! - エンタメパレス

 

柚木 浩(コミック編集者/映画ライター)
『香港電影城』シリーズの元編集者&ライター。
香港映画愛好歴は、『Mr.Boo!』シリーズを劇場で見て以来。
火が点いたのは『男たちの挽歌』『誰かがあなたを愛してる』『大丈夫日記』『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』あたりから。
好きな香港映画は1980年代後半~90年代前半に集中しているが、2000年以降のジョニー・トー作品は別格。邦画、洋画、韓国映画、台湾映画も見る。ドラマは中国時代劇、韓国サスペンス系。好きな女優、チェリー・チェン。